住宅ローンは繰り上げ返済することで利息を減らせるが、手数料がかかることもある。繰り上げ返済の手続き方法によって手数料の有無や金額も変わる。住宅ローンの繰り上げ返済を活用し、なるべく手数料や金額も安くなる方法を考えよう。

目次
1.住宅ローンの繰り上げ返済の種類
2.繰り上げ返済手数料を銀行10社で比較
3.住宅ローンの繰り上げ返済のメリットと選び方
4.住宅ローンを繰り上げ返済するときの注意点
5.住宅ローンの繰り上げ返済は余裕資金で行う

1.住宅ローンの繰り上げ返済は2種類

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(画像=PIXTA)

住宅ローンの繰り上げ返済は全額繰り上げ返済と一部繰り上げ返済があり、一部繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類の方法がある。その特徴を押さえて返済方法を選択しよう。

繰上げ返済の種類(1)……期間短縮型の繰り上げ返済

住宅ローンの期間短縮型の繰り上げ返済は、毎月の返済額は変えずに返済期間を短くする方法だ。返済額が3年分なら住宅ローンの返済期間も3年間短縮され、その間に支払う予定だった利息分が軽減される。

住宅ローンの利息の軽減効果は返済額軽減型よりも高く、繰り上げ返済といえば一般的には期間短縮型が選択される。実際にどのくらい繰り上げ返済の効果があるのか、以下の条件でシミュレーションしてみよう。

<条件>
借入金額……5,000万円
返済期間……35年間
借入金利……固定1.5%
毎月返済額……15万3,092円

返済タイミング 効果 繰り上げ返済額
300万円 500万円 1,000万円
5年後 利息軽減額 161万2,734円 259万4,181円 474万5,111円
短縮期間 2年6ヵ月 4年1ヵ月 8年
10年後 利息軽減額 128万5,410円 206万1,266円 373万7,760円
短縮期間 2年3ヵ月 3年10ヵ月 7年5ヵ月
15年後 利息軽減額 98万914円 156万4,766円 279万5,664円
短縮期間 2年2ヵ月 3年6ヵ月 6年11ヵ月
(「知るぽると」のシミュレーションツールより筆者作成、2020年6月)

住宅ローンの繰り上げ返済の効果は時期が早いほど、金額が大きいほど高くなる。同じ繰り上げ返済額であっても、返済タイミングによってこれだけ大きな差が出るのだ。

住宅ローンの繰り上げ返済の目的は利息を減らすことだろう。さらに期間短縮型の場合は返済期間を短くすることも目的になる。定年退職時などに合わせて期間を短縮しておきたい人は、繰り上げ返済する金額や時期をあらかじめシミュレーションしておくといいだろう。

繰上げ返済の種類(2)……返済額軽減型の繰り上げ返済

住宅ローンの返済額軽減型の繰り上げ返済は、住宅ローン期間は短くならないが、毎月の返済額が軽減される方法だ。月々の住宅ローンの返済額が下がるため、期間短縮型より繰り上げ返済の効果を実感しやすいかもしれない。

住宅ローンの毎月の返済額が下がれば、家計を安定させたりほかの必要な支出に使えたりする。返済額軽減型の繰り上げ返済効果も以下のシミュレーションで確認してみよう。

<条件>
借入金額……5,000万円
返済期間……35年間
借入金利……固定1.5%
毎月返済額……15万3,092円

返済タイミング 効果 繰り上げ返済額
300万円 500万円 1,000万円
5年後 利息軽減額 72万5,095円 120万8,586円 241万7,170円
毎月の返済額 14万2,715円 13万5,798円 11万8,504円
10年後 利息軽減額 59万7,273円 99万5,531円 199万1,060円
毎月の返済額 14万1,060円 13万3,040円 11万2,988円
15年後 利息軽減額 47万2,231円 78万7,102円 157万4,213円
毎月の返済額 13万8,563円 12万8,878円 10万4,664円
(「知るぽると」のシミュレーションツールより筆者作成、2020年6月)

住宅ローンの返済額軽減型の繰り上げ返済は、期間短縮型と比べて利息軽減効果は弱まるが、毎月の返済額が軽減される。特徴的なのは、毎月の住宅ローンの返済額は、繰り上げ返済のタイミングが遅いほど減少額が大きくなることだ。

早く返済するほど軽減効果の大きい期間短縮型とは対照的であるため、毎月の住宅ローンの返済額負担を抑えたい場合は繰り上げ返済のタイミングには注意しよう。

2.住宅ローンの繰り上げ返済手数料を銀行10社で比較

住宅ローンの繰り上げ返済にはメリットがあるが、手続きには手数料がかかることがある。返済手続きの違いや一部繰上げ返済か全額繰り上げ返済かによって手数料が変わるので、できるだけコストの少ない方法を選択しよう。参考までに主要銀行の繰り上げ返済手数料を紹介する(2020年6月時点)。

住宅ローンの一部繰り上げ返済にかかる手数料を銀行10社で比較

住宅ローンの一部繰り上げ返済に必要な手数料は、インターネットバンキングを使えば多くの銀行で無料だ。対面銀行では窓口やコールセンターでも手続きできるが、決して安くはない。借り入れの金利タイプによって金額が大きく異なる場合もある。

住宅ローンの繰り上げ返済の手続きはそれほど難しくないので、可能な限りインターネットから手続きをしてみよう。

金融機関10社の住宅ローンの一部繰り上げ返済にかかる手数料を表にまとめた。

銀行 インターネット 窓口 電話・その他
三菱UFJ銀行 無料 1万6,500円 5,500円
みずほ銀行 無料 3万3,000円
三井住友銀行 無料 1万6,500円 5,500円
りそな銀行 無料 変動・全期間固定
5,500円
変動・全期間固定
5,500円
固定金利選択型
3万3,000円
固定金利選択型
3万3,000円
ARUHI 無料 無料
住信SBIネット銀行 無料
auじぶん銀行 無料
イオン銀行 無料 無料
楽天銀行 無料 無料
ソニー銀行 無料
(各銀行のホームページより筆者作成)

住宅ローンの全額繰り上げ返済にかかる手数料

住宅ローンの全額繰り上げ返済にかかる手数料は、一部繰り上げ返済よりも高くなることがほとんどだ。インターネットから一部繰り上げ返済の手続きは無料だった銀行でも手数料がかかったり、そもそもインターネットでの手続きを受け付けなかったりする銀行もある。

無料が多い一部繰り上げ返済では、手数料をあまり気にする必要はないが、住宅ローンを全額繰り上げ返済する可能性のある人は手数料を必ず念頭においておこう。

金融機関10社の住宅ローンの全額繰り上げ返済にかかる手数料を表にまとめた。

銀行 インターネット 窓口 電話・その他
三菱UFJ銀行 1万6,500円 3万3,000円 2万2,000円
みずほ銀行 無料 3万3,000円
三井住友銀行 5,500円 2万2,000円 1万1,000円
りそな銀行 変動・全期間固定
1万1,000円
変動・全期間固定
1万1,000円
固定金利選択型
3万3,000円
固定金利選択型
3万3,000円
ARUHI 無料
住信SBIネット銀行 変動金利
無料
変動金利
無料
固定金利
3万3,000円
固定金利
3万3,000円
auじぶん銀行 変動金利
無料
固定金利
3万3,000円
イオン銀行 5万5,000円 5万5,000円
楽天銀行 無料 無料
ソニー銀行 無料
(各銀行のホームページより筆者作成。2020年6月)

3.住宅ローンの繰り上げ返済のメリットと選び方

住宅ローンの繰り上げ返済の最大メリットは期間短縮型でも返済額軽減型でも利息を軽減できることだ。さらに期間短縮型では残りの返済期間が短くなり、返済額軽減型では毎月の返済額が減少する。

こうした特徴も踏まえて、それぞれの繰り上げ返済に向く人は以下に当てはまるのではないだろうか。

期間短縮型が向いている人

・とにかく利息を減らしたい
・定年までに完済したい
・お得な繰り上げ返済方法を選びたい
・できるだけ早く完済して貯蓄に回したい

住宅ローンの期間短縮型の繰り上げ返済のように、返済期間が短くなることは将来への安心感にもつながる。数十年続く住宅ローンの返済は心理的な負担も感じやすいだろう。期間短縮型の繰り上げ返済はできるだけ早く返済してローンから解放されたいという人に向いている。また返済額軽減型よりも利息の面で有利になる点から、家計に余裕がある人の選択肢にもなる。

返済額軽減型が向いている人

・住宅ローンの負担が大きく貯蓄できない
・返済額を下げて生活を楽にしたい
・収入の減少リスクに備えたい
・将来の教育費増加が不安

住宅ローンの返済額軽減型の繰り上げ返済を選択する人は、何かしらの理由で月々の返済額を減らしたい人のはずだ。お得さで考えれば期間短縮型が上回るが、それがベストな選択肢とは限らない。生活に余裕を持つことで気持ちにも余裕が生まれて、利息軽減という数字以上のメリットを感じられるかもしれない。また.住宅ローンの返済額の軽減は収入減少など、万が一に対するリスクヘッジにもなる。

4.住宅ローンを繰り上げ返済するときの手数料以外の注意点

住宅ローンの繰り上げ返済をするときは手数料に注意したいが、そのほかにも注意点はある。

注意点1……繰り上げ返済で保証会社の手数料がかかることもある

民間銀行の住宅ローンを借りる場合、契約者が返済できなくなったときに備えて保証会社から住宅ローンを保証してもらわなければならない。そのときの保証料は契約者負担になる。

住宅ローンの保証料を一括前払いで支払っている場合、繰り上げ返済をしたときの保証料は1万円程度だ。これは住宅ローンの繰り上げ返済手数料とは別途かかるため、手続きするときにはしっかり確認したい。

注意点2……繰り上げ返済で住宅ローン控除に影響が出る

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末の住宅ローン残高の1%を所得税や住民税から控除できる制度だ。最長10年間は適用されるが、消費税10%の住宅を購入し2020年末までに入居した場合は3年間延長される。この期間中に繰り上げ返済すると住宅ローン残高が減少するので、所得税から控除できる金額も減ってしまう。

住宅ローンの控除期間中は繰り上げ返済しない人も多いが、必ずしも控除期間終了を待つ必要はない。というのも契約者の収入によっては、そもそもの税金が住宅ローン控除で減税できる金額より少ないこともあるからだ。その場合は控除額を還付しきれず、住宅ローンの繰り上げ返済を優先するほうが得になるケースもある。

また借り入れ金利が高い場合は、住宅ローン控除の期間中でも繰り上げ返済したほうが有利になりやすい。どの時点で住宅ローンを繰り上げ返済するかはシミュレーションしてから判断しよう。

注意点3……繰り上げ返済の最低金額が高いことがある

住宅ローンの繰り上げ返済は金融機関や住宅ローン商品、返済の手続き方法によって最低金額が異なる。インターネット経由なら1万円以上からできる銀行も多いが、最低金額を10万円や100万円と設定している場合もある。

住宅ローンの繰り上げ返済は、同じ金額なら一括より分割で早めに返済していくほうが利息を軽減できる。積極的に繰り上げ返済をする予定の人は最低金額も確認しておくといいだろう。

注意点4……繰り上げ返済より借り換えのほうが得する可能性もある

住宅ローンの繰り上げ返済より借り換えをしたほうが得になる可能性もある。住宅ローンの借り換えは新規で借り入れするときと同様の諸費用が発生するが、金利が大きく下がるならコスト以上に大きく利息を減らせることがある。

銀行のホームページで借り換えシミュレーションができるところもあるので、住宅ローンの繰り上げ返済する場合と比較して検討してみよう。

5.住宅ローンの繰り上げ返済は余裕資金で行う

住宅ローンは完済するまでに20年や30年といった長い時間がかかる。少しでも負担を減らすために繰り上げ返済は効果がある。しかし手元にある程度のお金を残しておくことも大切だ。

例えば貯蓄するお金を⑴急な病気やケガに備える緊急資金、⑵学費などの将来使う予定のお金、⑶余裕資金に分けたとしよう。住宅ローンの繰り上げ返済に使ってよいお金は⑶の余裕資金だけだ。手元のお金をすべて住宅ローンの繰り上げ返済に回すと、必要な時に資金が不足するなどのリスクも出てくる。

住宅ローンの繰り上げ返済で住宅ローンの負担は軽減できるが、普段の生活も大切だ。バランスを取りながら計画的に住宅ローンを返済していこう。

執筆・國村功志(ファイナンシャルプランナー)
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成FPとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも行っている。CFP®️、証券外務員一種

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